「おっ、固いな。」
一口目はちょっと固め。
ビヤンネートルの焼き菓子の中では、ジンジャーショートブレッドが一番のお気に入り。ショートブレッドはやわらかいものが多いけど、ビヤンネートルのショートブレッドはちょっと固め。
バター多めの程よいサクサク感と、この歯触りがたまらない。
「代々木上原で美味しいものを買って贈りたいな。」
出産退院後、家に帰る途中の車の中。出産祝いをもらったお友達にありがとうの気持ちを贈りたい。
車内には生まれたての赤ちゃん。車でパッと立ち寄れるお店はないかしら。
「ビヤンネートルの焼き菓子なら喜んでもらえるかも。」
頭に浮かんだのは「パティスリー ビヤンネートル」。
ショートブレッドが美味しかったのを思い出した。
代々木上原のケーキ屋さんといえば、私の中ではアステリスク(asterisque)とパティスリー ビヤンネートル(BIEN-ÊTRE PÂTISSERIE)。アステリスクはケーキ、ビヤンネートルは焼き菓子を買うことが多い。ケーキはすぐに食べなきゃいけないけど、焼き菓子なら日持ちするし自分が食べなくても来客時にみんなでたのしめる。
「よし、ビヤンネートルに行ってみよう。」
産後初のお出かけがケーキ屋さんだなんて、気分が上がる。
「ようこそいらっしゃいました。」とお出迎えしてくれているような、ほっと落ち着く店構え。
温もりある木の扉を思い切り押す。
「あれ?開かない。。」
そうだ。スライド扉だった。
何度来ても押してしまいますが、こちらはスライド扉。
毎回同じ間違えをする感じもなんだかほっこりする。
気を取り直し、気持ちよくスライド。
かわいらしい店内がお目見えしました。
ケーキが並ぶショーケースの奥には10席のイートインスペース。小さめの店内には、温もりある心地よい空気が流れる。お友達のおうちに招かれたような、都会であることを忘れてしまうような、そんな空間。
イートインもできるので店内はいつも満席。いつか人気のパフェも食べてみたいな。
「そうそう、今日は贈り物を買うんだった。」
買うものは大体いつも同じ。
コフレNo.2。
クッキー2種とパウンドケーキ、マドレーヌなどの焼き菓子の詰め合わせ。自分で選んで箱に詰めても金額はほとんど変わらないけど、私はいつもお店セレクションのこちらを購入。
そして出産のご褒美。ジンジャーショートブレッドも買っちゃおう。
ケーキも食べたいな。ミルフィーユもおいしそう!でも今日は赤ちゃんが待ってるから、また次回にしよう。
「甘いものに囲まれてしあわせ。。」
病院から一変。さっきまで病室で寝ていたのに、今はこんなにあまい香りとかわいいケーキたちに囲まれる。5日間病室でずっと赤ちゃんのことばかり考えていたけど、一瞬だけでも忘れられたことがうれしい。
ビヤンネートルに来てよかった。
お家に帰り、早速プレゼントの準備。
手渡しできる友達にはこのまま紙袋で。
手渡しできない友達には郵送しよう。
プチプチで包んでお手紙を添えて。
うん。優しい紙の質感のパッケージに、パキッとした水色の封筒が良く似合う。
お店の雰囲気までくまなく届けたい。
よし、お店のキーカラーの水色が印象的な紙袋に包んで郵送しよう。
水色の紙袋から真っ白いお菓子の箱を取り出す。手紙を読んで、紐をほどき、お菓子の箱を開ける…。
「手紙は埋もれないようにリボンの隙間に挟んでおこう。」「クッキーが割れないように、しっかりプチプチで包まないと。」
受け取ったときの友人の姿を想像。鮮明に思い描くと、まるで自分が受け取ったみたいにワクワクしてくる。
なんだか得した気分。
贈り物にこだわるようになったのは、あるプレゼントがきっかけ。
産後間もない頃、ずっとお世話になっている夫婦から贈り物が届いた。箱を開けてみると、一番上にはおめでとうの手紙と可愛がっている猫ちゃんの写真。そしてその下には赤ちゃんの洋服。
「孫の洋服を買うような気分で楽しく選びました。」
さらに下には、関西でしか買えないうどん。
「関西に行くとよく義母が出してくれるお気に入りのうどんです。」
贈りもを選ぶときの気持ち、赤ちゃんが産まれて嬉しい気持ちがプレゼントと共に所々に手紙で添えてあった。
目に見える気持ち。見えない気持ち。
箱の隅々にたくさんのおめでとうが詰まっていた。
「こんなに思ってくれてるんだ。」
洋服やうどんも嬉しいけれど、なによりも愛に溢れた気持ちが嬉しかった。
お菓子は通販でも贈れるけれど、誰でもどこでも買えてしまう。せっかくなら通販できない、自分が大好きなものを気持ちと共に贈りたい。
プレゼントを買いに行くときはゆっくりと余裕があるときに。
店内の雰囲気を感じ、甘い香りに包まれ、店員さんの話をじっくり聞いてお菓子を吟味。話を聞いているうちに自分用のお菓子まで買っちゃう。
そして家に帰ってセルフラッピング。
自分で郵送するとカスタマイズ自由。詰め込み放題。
開けたときの姿を想像して、お手紙や紙袋を入れたり他の贈り物を添えたり。時間をかけて選んでくれたプレゼントに、あの手この手でありったけのありがとうを詰め込む。すると自分が受け取ったような幸せな時間が流れる。
こんな風に自分の目で見て、手に取り、ワクワクしながら選んでラッピングしたプレゼントは、自分の心にもずっと刻まれる。大切な思い出になる。
プレゼントの目的は気持ちを運ぶこと。
美味しさを、体験を、感動を届けたい。
その根底には、ありがとうと大好きな気持ち。
たとえ美味しいものであっても、気持ちが伝わらないのは寂しい。
説明がましいのはいやだけど、通販でもなぜそれを贈ったのか、そして気持ちをことばで伝えようと思う。
「気持ちが届いてくれるといいな。」
鮮やかな水色の紙袋からやさしい質感のパッケージ。
ありがとうの気持ちにリボンをかけてお手紙を添えて。
お店に行くワクワク、友人の喜ぶ姿を想像するワクワク、さらに自分までプレゼントをもらったようなしあわせ気分。
プレゼントは手間を掛けた分だけ、自分もしあわせになる。
そしてご褒美のショートブレッド。普段はなかなか買わないけど、プレゼントと一緒に自分へのご褒美までついてくるなんてさらに幸せ。
BIEN-ETRE PATISSERIE (パティスリー ビヤンネートル) / 代々木上原