ちょっと憂鬱なとき、やる気が起きないとき、時間がないけどどうしても気分転換したいとき。家から一番近いカフェ、パドラーズコーヒーへ行きます。
産後はじめてのお散歩で訪れたのもパドラーズコーヒー。
産後10日目。カラダはガタガタ。だけど歩ける余裕も出てきたので、久しぶりにひとりで外を歩いてみたくなった。
「骨盤ガタガタだなぁ。あれ?あんなに大きかったお腹が引っ込んでる。腹筋に力が入らない。早く歩けない。。」
出産直後はとにかく毎日が新しいことだらけ。自分のカラダを見つめる余裕もない。産後10日目のお散歩でやっと自分のカラダの変化に気付く。それとともに妊娠前の日常を思い出す余裕も出てきた。
「遠くには行けないけど、気分転換したいな。」
赤ちゃんと少し離れて、妊娠前の日常に戻りたくなった。
そこで向かったのがパドラーズコーヒー。
パドラーズコーヒーに行くといつも気が引き締まる。
コロナ真っ最中、はじめての緊急事態宣言のとき。毎日家に閉じこもり、ほとんどのお店が閉まっていて気分転換もできない。そんなときふらっとお散歩に出てみると、パドラーズコーヒーがテイクアウトのみオープンしていた。
「この感じ、懐かしい!」
パドラーズコーヒーのロゴが入ったテイクアウトカップを受け取った瞬間、気分が上がる!
お店のコーヒーを飲むなんて何日振りだろう。コーヒーのテイクアウトすら懐かしくなるくらい家に閉じこもっていたんだな。
緊急事態宣言が出てからというもの、自分で選んだカップ、自分の空間で飲んでいたコーヒー。大好きなコーヒーも、自分が作り出した環境で毎日飲んでると飽きてくる。。でも今日は、丁寧に淹れられたコーヒーをお店こだわりのカップで外で楽しむ。これだけのことなのに、視界がパッと明るくなる!
「コロナ前には気付かなかったけど、日常のひとつひとつを切り取ると本当にありがたいな。」
コロナ前の日常に戻ったような気分。
引き締まったコーヒーを飲んで、ピシっとしようという気持ちになった。
「やっと着いたぁ。。」
家から歩いて5分。いつもは近い距離が、産後のカラダにはものすごく遠く感じる。
ほっとするのも束の間。パドラーズコーヒーの入り口の木の扉の前に立つと、なんだかいつも気が引き締まる。
「いらっしゃいませ。」
一歩足を踏み入れると、ピリッとした空気に背筋が伸びる。それとは裏腹に、木目調のぬくもりある空間に響くやわらかいレコードの音。
これこれ、この感じを体感したかった!
リラックスする空間なのに気が引き締まる。この家では感じられないコントラストが懐かしくて心地よい。そして普段の自分に戻れたことにちょっとほっとした。
今日は赤ちゃんが待っているから長居できないな。店内の雰囲気を少し味わって、あとはテイクアウトしよう。
「少しだけ店内で飲んで、テイクアウトしたいのですが。」
「それでは後でテイクアウトカップに移し替えるので、店を出る時に声を掛けてください。」
店内ではコーヒーカップ、店外ではテイクアウトカップ。
お店としては手間がかかるのに、それよりも美味しくコーヒーを飲むこと、店内の雰囲気を大切にすることを優先してくれることに感動!
そんなこだわりが気持ちを引き締めてくれて、余計に気合が入る。
「クッキーもください。」
カウンターにはkinonedo(きのね堂)のお菓子が並ぶ。
今日は出産という大仕事を終えて、はじめてのお散歩。ご褒美にクッキーも買っちゃおう。
「今日はどの席に座ろうかな?」
テラスが見えるカウンター席、大きいテーブル席、二人がけのソファ席、通りが見えるテーブル席。そして店外のテラス席。
今日はのんびり緑を眺めたい気分。テラスが見えるカウンターの席に座ろう。
ちょっと高めの椅子に腰掛ける。産後はとにかく座り心地のよい椅子に座っていた。…いや、普通の椅子には座れなかった。。涙。そのためか、椅子の座面の不安定さ、バランスを崩しそうな感覚、背筋が伸びる感覚をひしひしと感じる。それが今日は新鮮で心地よい。
いつもは当たり前の空間なのに、今日は別世界に感じる。まるで模型で作られた世界の中に、突然ポンっと置かれたみたい。おしゃべりしている人たちも、映画のワンシーンのよう。
出産してから数日間、今までではありえない生活をしていた。想像を遥かに超えた出産体験を味わった後は、昼夜の授乳で眠れず、家に閉じこもりベッドの上で過ごす生活。そんな生活を送っていたので、気分はまるで宇宙人。
レコード、スピーカー、壁時計…。パドラーズコーヒーは、置いてある一点一点がこだわりの家具。そんな空間だから余計に非現実感を味わえる。人生初の経験にちょっとワクワクする。
「お待たせしました。」
カフェラテとクッキーが到着。
温もりあるコーヒーカップに描かれた繊細なラテアート。木のソーサーの額縁に飾られている姿に目の前が明るくなる。
「やっぱり店内用のカップでよかった。気分が全然ちがう!」
コーヒーカップを持つと再び背筋が伸びる。陶器の手触りを感じながら久しぶりのラテを一口。
酸味とコクが丁度よいエスプレッソの深い味わい。そこに追い打ちをかける濃厚なミルク。
キリッとしながらも濃厚なカフェラテに、ボヤッとしていた頭が冴えてくる。
そしてお楽しみ、kinonedoのクッキー。
こんがり小麦色に焼けた分厚いクッキー。表面は卵黄でツヤツヤ。側面のタイヤのようなでこぼこがかわいらしい。
こだわりの国産小麦がびっしり詰まったドッシリと重みのあるクッキー。それなのに一口食べるとサックリ!全体をふわりと包み込むてんさい糖の素朴な甘み。そして側面についた少し大きめの塩がピリリと塩味を乗せて、たまにカリッとやってくる。これがたまらない!
kinonedoのクッキーは、白砂糖を使わずにこだわりの国産小麦で作られている。優しい素材で作られたクッキーは、産後の弱ったカラダには特にしみる。しかも白砂糖を食べたときのように、頭がカキンとなる感覚がない。
産後の大変だった時間をすっかり忘れ、キリッとしたラテと優しい素材のほんわりクッキーとの対比をたのしむ。これは最高のご褒美だぁ。。
「体調が戻ったら何をしようかな?」
あれもやって、これもやらなきゃ。
産後は頭も体も赤ちゃんのことばかり。自分のことを考えたのは今日がはじめて。
いつもと違う思考回路に入ることができた。ただそれだけのことが、今日はうれしい。
濃厚なカフェラテの後にお水を一口。
厚みのあるどっしりとしたグラスに注がれた冷たいお水が気持ちよい。そしていつもよりおいしく感じる。
「このグラス、系列店の雑貨屋さん(BULLPEN)でも売ってたな。今度買いに行こう。」
グラスを買うことを考える余裕までできた自分を褒めたい気分。
テラスを眺めながら慌ただしさを忘れるひととき。
温かいレコードの音を聴きながら気持ちはほっとしているけど、背筋は伸びる。そんなちょっとした緊張感を久しぶりに楽しむ。
「テイクアウトにしてください。」
半分だけ残ったコーヒーをテイクアウトカップに入れてもらい、お店を後に。
テイクアウトカップを持つと、また気分が変わる。
コーヒーの味、温度、カップの手触り、見える世界…。カップが変わるだけで、全てがちがう。
立って飲む、座って飲む。洋服を着替えるように、シチュエーションにあわせてカップを変える。些細なことだけど、こんな風にひとつひとつじっくり味わうことって大切だとあらためて実感。こんな体験まで提供してもらえるなんて、やっぱりパドラーズコーヒーに来てよかった!
「パドラーズコーヒーはひとつひとつが完璧だから、落ち着く空間なのに一歩踏み入れると背筋が伸びてピリッとするんだな。」
同じコーヒーを2度楽しませてもらい大満足。テイクアウトカップ片手にお店の余韻に浸りながらお家へと急ぐ。
落ち込んだとき、気分転換したいとき、良いアイデア、ポジティブな思考をしたいとき。思考を一旦リセットしたいと思っても、弱っているときや心に余裕がないときは自分の力ではなかなか難しい。そんなときはお散歩して環境を変えると気分が変わる。
歩きながら風を感じ、小鳥のさえずりを聴き、揺れる木々を眺め、空気の匂いを嗅ぐ…。家では感じられない五感を使った情報に脳が刺激を受けて、リラックスしてくる。
現在5ヶ月の赤ちゃんも全く同じで、お散歩して環境を変えると驚くほど機嫌が良くなる。そんな姿を見ていると、人間の脳の仕組みとお散歩の偉大さをしみじみ実感する。
そこにカフェとコーヒーの力を借りると、強制的に脳がカチッと切り替わる。完成された世界観の中で飲むコーヒーの力は最強。優しいレコードの音を聴き、コーヒーの香りを嗅ぎ、カップの感触を感じながら丁寧に淹れられたコーヒーを味わう。
お散歩でリラックス状態の脳が、さらに多方面からの刺激を受けてポジティブスイッチが入る。
私にとってパドラーズコーヒーは、そんな脳のリセット用の飛び道具のひとつ。
テイクアウトではもったいない。店内でコーヒーを飲んで気を引き締めるのもよし。テラス席でコーヒー片手にのんびり語るのもよし。そしてコーヒーとセットでkinonedoのクッキーを食べると、さらに気分は最高潮!
キリッとしたコーヒーを飲んで、ネクタイを締めるように今日も頭をリセット。
PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー) / 代々木上原